AIが数時間で生成した「特許出願書類」。書式は整い、図面も揃っている。それを手にした経営者が、投資家に向かって「特許出願の準備はできています」と言う——ここ二年ほど、こうした場面が目に見えて増えた。
問題は、書類の体裁が整っているかどうかではない。その書類が結局のところ何を保護しているのか、持参した本人が説明できないことにある。
AIは確かに役に立つ。発明届出書の整理、一次調査、図面の生成、さらには相当それらしい出願書類の作成まで、速度は本物だ。しかし「速い」ことと「実効的に保護できる」ことは別の話である。投資家が本当に知りたいのは「特許を出願したか」ではなく、「その特許ポートフォリオは無効主張や権利範囲をめぐる争いに耐えられるか」である。
本記事は、米国の実務家が近時まとめた五段階のフレームワークを、台湾の研究開発型企業が実際に直面する状況に置き換え、台湾法と米国法の違いを項目ごとに対照したものである。研究開発の途上にある方、資金調達を控えている方、技術提携の交渉を抱えている方であれば、読み終えたときに自社がどのチェックポイントで止まっているかを自分で判断できるはずだ。
チェックポイント一:情報開示の管理——機密のつもりが、すでに開示されているかもしれない
特許の仕事は「執筆」からではなく、「情報開示の管理」から始まる。
第一の問いは単純である。この発明を、今、誰が知っているか。第二の問いのほうが重い。相手はどのような守秘義務の下でそれを知ったのか。
台湾の弁理士に相当する専利師(專利師)に相談することと、潜在的な提携先・投資家・顧客・受託製造業者・大学研究室と気軽に話すこと、そして一般向けAIサービスに入力して尋ねることは、法的効果がまったく異なる。前者は通常、専門職の守秘枠組みの中で行われる。後者は契約の有無と取引慣行次第であり、運が悪ければ、事後に何の保護もなかったと気づくことになる。
台湾専利法第22条第3項は、発明と実用新案に12か月の新規性喪失の例外期間を認めている。米国の35 U.S.C. § 102(b)(1)も12か月であり、一見すると対称的に見える。しかし欧州・中国・日本の例外期間の要件は台湾より総じて厳格であり、しかも各国が各国の制度でしか認めない。台湾で例外の適用を主張できたことは、欧州や中国が同一の開示について新規性を失わないと扱うことを意味しない。
海外顧客や受託製造業者と日常的にやり取りする企業、あるいは国際展示会に出展する研究開発型企業にとって、実務的な結論は昔から変わらない。まず出願し、開示は後。台湾の例外期間を、世界中どこでも通用する保険証券のように扱ってはならない。
発明の内容を一般向けAIサービスに入力することは、それ自体が開示(公知)に該当する。その対話は誰のサーバーに保存されるのか、モデルの学習に使われる可能性はあるのか、サーバーは国外にあるのか——これらはEnterキーを押す前に確認すべき事項だ。保存も学習も行わないと明示的に約束するエンタープライズ向けツールは別問題である。ただし、その利用規約を社内で実際に読んだ人間はいるだろうか。
権利の帰属もこのチェックポイントで処理しておく。台湾専利法第7条は、職務発明について出願権と特許権を使用者に帰属させる。第8条は従業者に手続を用意している。従業者が書面により職務発明でない旨を主張した後、使用者が6か月以内に異議を述べなければ帰属はそこで確定し、以後争えなくなる。裏を返せば、職務発明の認定プロセスと書面保存の仕組みを持たない企業にとって、この「6か月の沈黙で確定」という規定は自社を傷つけうる。発明者・顧問・インターンそれぞれの権利帰属は、出願前に調査しておくべきである。
このチェックポイントの実務ルール:誰が何を、どの守秘義務の下で知っているかを確認してから、外部に出すか否かを決める。台湾の例外期間は、世界共通の例外ではない。
チェックポイント二:AI支援による発明届出書——整理はAI、発明者は人間
散在するアイデアを体裁の整った発明届出書にまとめる作業において、AIは発明者や事業部門にとって有用である。ただしその目的は、専利師がより速く状況を把握できるようにすることであって、専利師の判断を代替することではない。
充実した発明届出書は、次の問いに答えられる必要がある。この発明はどのような課題を解決するのか。既存手法と比べてどこが優れているのか。実際に何を作ったのか(何を作る予定かではない)。主要な構成要素または工程は何か。代替案や予備設計としてどのようなものがあるか。裏付けとなるデータや図面はあるか。失敗した経路はどれか。各技術的特徴は誰が着想したのか。そしてAIはどの工程に関与したのか。
ハードウェアや製造プロセスの発明であれば、さらに二点——現時点で商業化されているバージョンがどのようなものか、今後6か月から12か月でどの方向に変わりうるか——を記載しておく。企業はピボットし、製品の仕様も変更される。発明届出書を狭く書きすぎると、後で調整する余地が残らない。
では、AIの助けを借りた発明の発明者は誰か。台湾にはすでに明確な回答がある。台湾智慧財産及商業法院110年度行專訴字第3号判決は、AI「DABUS」を発明者として記載した出願を退け、台湾専利法上の発明者は自然人でなければならないと判断した。AIは法的には「物」であって「人」ではなく、権利の客体であって権利の主体ではないため、台湾経済部智慧財産局(TIPO)の不受理処分に違法はない、というものである。米国連邦巡回控訴裁判所も、Thaler v. Vidal(2022年)において同様の立場を取っている。AIは実験設備やモデリングソフトウェアと性質上変わらない道具であり、実際に技術的解決策を着想した人間が発明者となる。
AIを使ったことで、アイデアに関与した人間が発明者資格を失うわけではない。ただし記録は残し、各人が実際に何を寄与したのかを明記しておくこと。発明者の記載の誤りは事後に訂正できるが、投資家も訴訟の相手方も、この種の経緯を掘り返すことに非常に長けている。
AIを使ったからといって、軽くなる義務が一つある——誠実開示の義務は軽くならない。AIによる調査で特許性に影響しうる先行技術や文献、競合製品資料が見つかった場合は、「結果はどうせ自分に有利だから黙っておこう」ではなく、専利師の判断に委ねるべきである。発明届出書を準備する目的は、発明を実際より良く見せることではなく、その後の審査と訴訟の検証に耐える記録を残すことにある。
このチェックポイントの実務ルール:事実の整理と欠落の発見にAIを使う。不利な事実を覆い隠すためには使わない。ましてや専利師の判断を代替させない。
チェックポイント三:特許性評価——出願できるかと、出願する価値があるかは別問題
発明届出書が整った後の問いは「出願できるか」ではない。出願したければ誰でも提出できる。本当に問うべきは、出願する価値があるか、現在の技術成熟度が一件の出願を支えるに足りるか、そもそも特許がこの事業課題に対する最適な手段なのか、である。
真剣な評価は広範な調査から始まる。思いついた中国語・英語のキーワードをいくつか検索して終わり、では済まない。台湾・米国・欧州・中国・日本・韓国の公開特許公報、およびPCT公開もすべて範囲に入れるべきである。WIPOの2025年統計によれば、中国・米国・日本は世界全体の特許出願件数で上位三位を占める。この三か国は検索の優先度が高い。
法的要件は台湾と米国で近い論理を共有しつつ、用語が異なる。新規性、進歩性(米国のnon-obviousnessに相当)、産業上の利用可能性、そして研究開発型企業が最も見落としがちな門檻である特許対象適格性である。
評価を体系的に行えば、投資家・提携先・取締役会に対して筋の通った説明ができる。「出願しました」ではなく、特許請求の範囲はこうで、どの先行技術を調査し、どのような拒絶理由が予想されるか、まで語れる。審査結果を保証できる専利師は存在しないが、経験を積んだ専利師であれば、その案件が新規性・進歩性・適格性・開示不十分のどこで止まりそうかを、あらかじめ見立てられるのが通常である。
このチェックポイントの実務ルール:出願できるかより先に、出願する価値があるかを問う。医療・診断関連の発明については、請求対象適格性を早期に確認し、審査通知を受けてから対応する事態を避ける。
チェックポイント四:専門家による明細書作成——台湾に仮出願はないが、国内優先権がある
コスト削減が最も高くつきやすいのが、このチェックポイントである。
発明届出書の整理をAIに手伝わせることの問題は小さい。完全な出願書類をAIに書かせてそのまま提出することは、リスクの次元がまったく異なる。
米国の仮出願(provisional application)には、しばしば誤解される特性がある。実体審査を受けないのだ。出願当日に内容の十分性を誰も点検しないからこそ、内容の乏しい仮出願が一年間ファイルの中で静かに眠り、その間ずっと「自社は保護されている」と全員が誤解しうる。問題はすべて後から表面化する——正式出願へ移行するとき、原開示より広い特許請求の範囲を主張しようとするとき、投資家からこの案件で現行製品を守れるのかと問われたとき、あるいは競合から優先権の基礎を攻撃されたときである。
米国連邦巡回控訴裁判所のNew Railhead v. Vermeer(2002年)では、仮出願に後に主張した技術的特徴の記載が欠けていたため、その特徴が先の出願日を得られず、結果として自社の先行販売行為により特許が無効と判断された。
台湾には米国の意味での仮出願は存在しないが、一部の機能が近い制度として、台湾専利法第30条の国内優先権がある。企業は先に基礎出願を行い、12か月以内に後の出願で国内優先権を主張することで、その間に実験データを補い、特許請求の範囲を調整しながら、先の出願日を保持できる。
違いがあるとすれば、この制度を使えるかどうかの前提が米国の仮出願と同様に厳格である点だ。後の出願で主張する技術的特徴は、先の出願が台湾専利法第26条にいう「明確かつ十分な開示」として記載した内容によって支持されていなければならない。先の出願に書かれていないものについては、後の出願が優先権を主張しても、その早い日付は得られない。New Railheadの教訓は、台湾の国内優先権の枠組みにそのまま移植できる。条文が入れ替わっただけで、語っていることは同じである。
よく書かれた出願は、代替案を記載し、意味のある図面を付し、退路を残し、不要な先行技術の自認を避け、商業上実際に販売しているバージョンを書き込み、同時に将来のピボットの余地を残す。企業がピボットすることは投資家も承知している——製品の仕様変更、データの更新、モデルの改良、プロセスの最適化。すべての曲がり角を予測できる出願など存在しない。それでも、しっかり書かれた出願は、資金調達用のスライドから生成されたAI文書よりも、はるかに多くの余地を確保できる。
付け加えると、専利師の選定は単なるソーシングの判断ではない。今日提出するこの出願は、後続出願、グローバル展開、ライセンス交渉、事業転換に伴う調整、権利行使の判断にわたり、二十年にわたる基準文書となりうる。
事務所の規模は本質ではない。本質は、その専利師がこの技術を理解しているか、自社の事業目標を理解しているか、この先の審査で何が起こるかを知っているか、そして投資家がデューデリジェンスで何を聞くかを分かっているか、である。
このチェックポイントの実務ルール:国内優先権は台湾版の緩衝機制だが、それが機能するかどうかは、一件目の出願がどれだけ十分に書かれているかで決まる。安価な出願が発明内容を公開してしまい、しかも後で主張したい範囲を支えられないとすれば、それが最も高くつく選択肢である。
チェックポイント五:特許ロードマップ——出願は起点であって、終点ではない
出願の提出は終点ではなく、管理期間の始まりである。発明特許の保護期間は、原則として出願日から20年である。
国内優先権の一年であれ、パリ条約優先権の一年であれ、「待機期間」ではなく「構築期間」として使うべきだ。この間、企業は製品を改良し、モデルを更新し、データを蓄積し、プロセスを最適化し続ける。これらの改良が後続の出願で受け止められていなければ、原出願が保護しているものは、もはや企業が現在実際に行っていることではなくなっている可能性がある。
海外展開の判断も早めに行う必要がある。パリ条約優先権は、出願日から12か月以内に他国で同一の優先権を主張できる制度であり——この12か月は、前述の新規性喪失の例外期間とは別のものであり、混同してはならない。PCTルートを使えば、まず一件の国際出願を確保し、優先権日から30か月以内にどの国の国内段階へ移行するかを決められるため、市場選択の判断を先送りできる。ただし、PCT自体が「世界特許」になるわけではない。
特許年金は年を追って逓増する構造であり、後期になるほど高い。実際の商業的価値を持たない特許を早期に放棄させ、パブリックドメインに帰するよう促す仕組みである。この点は台湾と米国で論理が近く、台湾が毎年納付、米国が特定の年度にまとまった維持費を納付するという、リズムの違いがあるにすぎない。趣旨は同じだ——どの技術を長期的に維持する価値があるのか、早めに見極めることである。
審査意見通知書は正常な手続の一部であって、出願失敗の兆候ではない。応答にあたっては、各拒絶理由に対応する反論または補正が必要となる。特許査定後、分割出願は台湾で常用される工具であり、機能上は米国の継続出願(continuation)に近く、原案の特許査定前に他の技術的特徴を別途主張する余地を企業に残す。このタイミングの見極めが、その後のポートフォリオに残る柔軟性を左右することが多い。
このチェックポイントの実務ルール:出願後の期間を、スケジュールを持つ構築計画として管理する。出願後はファイルにしまって通知を待つだけ、ではない。
経営者・研究開発責任者のためのチェックリスト
次の投資家とのミーティングの前に、あるいはある技術をピッチデックに書き込むか決める前に、自問しておく価値のある問いが五つある。
この技術は誰と議論したか、相手はどのような守秘義務の下でそれを知ったか。発明届出書には、各特徴を誰が着想し、AIがどの工程に関与したかが明記されているか。調査範囲は台湾以外の主要市場を含んでいるか。手元の出願は、自社が現在実際に販売している製品を保護するに足るか、それともまだ最初期の構想の段階で止まっているか。出願後、この構築期間に必要な作業を誰かが追跡しているか。
AIは特許の基本を消し去ったのではなく、むしろその重要性を高めた。AIは発明届出書をより完全に整理し、調査をより広く行い、専利師との初回の打ち合わせをより効率的にしてくれる。いずれも良いことだ。しかし同じツールが、薄い出願を実際より充実して見せることもできるし、宿題が終わる前に「自社は保護されている」と企業に誤解させることもできる。
当所が技術製造業のクライアントの特許ポートフォリオを扱う際の原則は単純である。AIは準備のために使うものであって、体裁を取り繕うために使うものではない。投資家を本当に安心させられる企業とは、開示を管理し、発明届出書の作成と評価を着実に行い、出願書類の作成を技術も事業も分かる専利師に委ね、そして特許期間全体を長期計画として管理している企業である。
本記事は一般的な解説であり、個別事案の法的助言ではありません。実際の出願戦略とポートフォリオ設計は、個別の技術内容と事業目標に応じて別途評価する必要があります。
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