台湾商標の審査:通常・ファストトラック・加速審査外国出願人はどれを選ぶべきか
台湾の商標出願には、通常審査・ファストトラック審査・加速審査の三つの審査ルートがあります。通常審査が標準です。ファストトラックは自動的に適用され、電子出願、標準の商品・役務名称、出願時の納付、委任状というTIPOの要件を満たせば、追加の公的費用はかかりません。加速審査は別途請求が必要で、1区分につきNT$6,000です。出願人は台湾での商標の使用または相当の準備を示す必要があり、場合によっては商業上の緊急性も必要です。審査が早まっても出願日や有効な優先日は変わらず、登録が保証されるわけでもありません。
結論:三つのルート、一つの判断
台湾の出願はすべて方式審査を経て実体審査に進みます。違いは順番待ちの列です。TIPOには通常ルート、出願の仕方によって自動的に適用されるファストトラック、そして2024年5月1日から請求できる有料の加速審査があります。
三つのルートは費用・要件・リスクの点で互換性がないため、最初の審査通知を受け取ってからではなく、出願前に選ぶべきです。
通常・ファストトラック・加速審査の比較
加速審査の「2か月」は最初の審査通知までの期間であり、登録までの期間ではありません。
| 通常審査 | ファストトラック | 加速審査 | |
|---|---|---|---|
| 追加の公的費用 | なし | なし | 1区分NT$6,000 |
| 適用のされ方 | 標準 | 出願の仕方で自動適用 | 出願ごとに別途請求 |
| 電子出願の要否 | 不要 | 必要 | 不要(電子・紙どちらも可) |
| 商標の種類 | すべて | 平面商標のみ。非伝統商標・証明標章・団体標章は対象外 | 証明標章・団体標章・団体商標を除くすべて。非伝統商標も請求可能だが審査に時間がかかりがち |
| 商品・役務の記載 | 受理可能な記載であれば可 | TIPO公表の標準名称をそのまま使用 | 記載方法に制限はないが、標準名称以外だと短縮効果が小さくなる場合あり |
| 証拠 | 不要 | 不要 | 必要:タイプⅠは全商品・役務について使用または相当の準備の証拠、タイプⅡは一部使用+緊急事由 |
| 時間への効果 | 基準 | 通常より約1.5か月早い。最初の通知は現在、出願から約5か月 | 請求から10〜15営業日で受理可否が判断され、受理後2か月以内に最初の通知 |
| 主な制約 | 待ち時間が最も長い | 標準名称リストと出願方式の要件による範囲の制限 | 証拠要件と追加費用(納付後は原則返還されない)。緊急の必要がない一般の出願人には、TIPO自身がファストトラックを案内 |
通常審査
基準として、TIPOの2025年統計では、最初の審査通知までが平均約5.6か月、審査終了までが約7.1か月です。これは、ファストトラック案件を含むすべての出願の平均であり、通常ルートだけの数字ではありません。最初の通知、審査終了、実際の登録は、それぞれ別の時点です。
当サイトの外国出願人向けガイドで挙げている「拒絶理由がなければ出願から登録まで概ね10〜12か月」には、公告と登録証の発行までが含まれるため、数字が長くなっています。
TIPOのリストにない記載が商品・役務に必要な場合、商標が通常の平面商標でない場合、または発売時期の制約がない場合には、通常審査が適しています。
ファストトラック:対象となる条件と短縮効果
ファストトラックは2020年5月1日からの試行を経て、2021年5月1日から恒久化されています。出願が次のすべてを満たすと適用されます:
- TIPOの電子出願システムで出願していること;
- 指定商品・役務のすべてが、システムのリストにある名称と完全に一致していること;
- 通常の平面商標の出願であり、非伝統商標・証明標章・団体標章ではないこと;
- 出願時に出願料を納付していること(連携口座、またはシステムが発行するeATM・窓口用納付書を使用);
- 代理人を選任する場合、出願後20日以内に委任状を提出すること。
ファストトラックでどれだけ早くなるか
追加の公的費用はありません。TIPOの2025年11月のFAQによると、ファストトラック案件の最初の通知は通常案件より約1.5か月早く、現在は出願から約5か月です。以前のTIPO資料では1.4〜1.6か月とされていました。変動しうる平均値としてお考えください。
外国出願人向けの実務上の注意が二点あります。第一に、委任状は署名のみで足り、公証・認証は不要ですので、20日という期限は現実的です。第二に、実際の制約は標準名称の条件です。完全一致が必要なため、他国向けに作成した商品リストは通常そのまま使えません。
加速審査:何を示す必要があるか
加速審査は商標法第19条第8項により、2024年5月1日から導入されました。請求は出願ごとに別途行い、時期は出願後でTIPOが最初の審査通知を出す前、費用は1区分NT$6,000です。TIPOがすでに補正通知や拒絶理由を出している場合は請求できません。
判断基準は「直ちに権利を取得する必要」があるかどうかです(商標法施行細則第19条の2)。これには二つの類型があります:
- タイプⅠ:指定商品・役務のすべてについて、商標がすでに使用されている、または使用の相当の準備がされていること。別途、緊急性を示す必要はありません。
- タイプⅡ:指定商品・役務の一部のみが使用または準備されており、かつ認められる緊急事由があること。たとえば第三者による無断使用、侵害警告、第三者からのライセンス要請、販売・代理店契約に裏付けられた発売計画、契約に裏付けられた出展予定、またはこれに準ずる事情です。適用される場合、一部の商品が使用されている区分については、その区分全体を加速対象にできます。
証拠・時期・制約
使用の証拠は、どちらのタイプでも必要です。使用ではなく準備を主張する場合は、いつ、どこで、どの販売経路で使用するかを具体的に示し、商品サンプルやデザイン案、事業計画書、締結済みの契約書などを添付します。
証拠中の商標は出願商標と同一でなければならず、使用日と使用者(出願人または被許諾者)が分かること、そして指定商品・役務と項目ごとに対応していることが必要です。製造業者、販売代理店、包装・物流業者などとの契約は、双方の署名が確実にそろっている必要があります。書類が不十分な場合はTIPOから補正通知があり、期限内に補正しなければ請求は受理されず、案件は通常の順番に残ります。
使用または準備は台湾国内であることが必要で、海外でのみ販売された商品は対象になりません。
証明標章・団体標章・団体商標は対象外です。立体商標や音商標などの非伝統商標も請求は可能ですが、審査通知を受けやすく識別性の証拠を補う必要があるため、通常、短期間で査定を出すことはできません。
申請書1通で請求できるのは1出願のみです。複数区分の出願では、全区分を同時に加速請求する必要があり、一部の区分だけが要件を満たす場合は、先に分割または補正による減縮を行います。費用は区分数×NT$6,000で、要件を満たさないために分割した場合、要件を満たす分割出願について加速審査費を再び納付する必要はありません。
TIPOの目標は、受理後2か月以内に最初の審査通知を出すことであり、2か月で登録されるという意味ではありません。また、加速しても登録が認められる保証はありません。
外国出願人はどのルートを選ぶべきか
| 状況 | 推奨ルート | 理由 |
|---|---|---|
| 台湾への初回出願で期限がなく、商品が標準名称に合う | ファストトラック | 追加の公的費用なしで、最初の通知が早い |
| 台湾への初回出願で、商品に独自の記載が必要 | 通常審査 | ファストトラックは使えない。要件のために範囲を絞り込まないこと |
| 数か月以内に台湾で発売予定で、代理店契約も締結済み | 加速審査(タイプⅠまたはⅡ) | 使用または間近の使用の証拠が、まさにこのルートの求めるもの |
| 海外でのみ販売しており、台湾での使用・計画はまだない | 通常審査またはファストトラック | 海外での使用だけでは加速審査の根拠にならない |
| 台湾で侵害警告・ライセンス要請を受けた、または明らかな模倣がある | 加速審査(タイプⅡ)。あわせて先取り対策も検討 | 緊急性が証拠で裏付けられる。先取りガイドも参照 |
| 非伝統商標 | 通常審査、または十分な証拠を伴う加速審査 | ファストトラックは非伝統商標を除外するが、加速審査は除外しない |
審査の速さは早期出願の代わりにならない
台湾は原則として先願主義を採っています。ファストトラックや加速審査は出願日を変えず、先にされた有効な出願や優先権主張に勝つこともできません。
要件を満たす外国出願人は、先の出願から6か月以内であれば優先権を主張できます。優先権は台湾への出願時に主張し、優先権証明書は台湾出願から3か月以内に提出する必要があり、期限を過ぎると主張しなかったものとみなされる場合があります。審査の速さはTIPOがいつ審査するかに影響するだけで、出願順位の法的根拠には影響しません。
すでに台湾市場に出ている、またはまもなく出る予定のブランドであれば、最初にすべきことは依然として出願であり、先行する競合出願の有無を確認することです。
費用
第1〜34類で指定商品20項目までの出願料は1区分NT$3,000です(超過は1項目につきNT$200)。電子出願は1出願につきNT$300が減額され、さらに商品・役務がTIPOの参考リストに合致する場合は1区分あたりNT$300が減額されます。査定後の登録料は1区分NT$2,500です。加速審査は1区分につきNT$6,000が加算され、出願の全区分数で計算されます。納付後は原則返還されません(例外:TIPOがすでに最初の審査通知を出していたために請求が受理されなかった場合、過誤納の場合など)。
公的費用は出願人を問わず共通で、現地代理人費用は案件ごとに別途お見積りします。
よくある落とし穴
- 加速審査を、第三者の先行出願を追い越す手段と考えてしまう。出願日は変わりません。
- ファストトラックの要件を満たすために商品・役務を絞り込み、実際の事業がカバーされなくなる。
- 登録しようとする商標と合致する証拠がないまま、加速審査を請求する。
- 時期を逃す:加速審査の請求は最初の審査通知前に行う必要があります。
- 優先権証明書は台湾出願日から3か月以内に提出する必要があることを忘れる。
WISECODEのサポート
- 出願前に、TIPOの標準名称とお客様の商品・役務を照合し、適する場合にファストトラックを使えるようにします。
- 発売や侵害によりスピードに費用をかける価値がある場合、TIPOが求める証拠を整えて加速審査を請求します。
- 出願前の先行調査と、競合する出願の監視を行います。
- 報告は英語で提供し、日本語の報告は日本デスクを通じてご利用いただけます。
公式資料
よくある質問
台湾の商標審査にはどのくらいかかりますか?
TIPOの2025年統計では、全出願の平均で最初の審査通知まで約5.6か月、審査終了まで約7.1か月です。ファストトラックは最初の通知が平均約1.5か月早く、加速審査は請求受理後2か月以内の最初の通知を目標としています。
外国出願人もファストトラックを利用できますか?
はい。条件は国籍ではなく出願の仕方に関するもので、電子出願、標準名称そのまま、出願時の納付、20日以内の委任状提出です。
ファストトラックは追加費用がかかりますか?
追加の公的費用はかかりません。
加速審査の費用はいくらですか?
出願料に加えて1区分NT$6,000で、納付後は原則返還されません。
海外での使用は加速審査の対象になりますか?
いいえ。商標が台湾国内で使用されている、または使用の相当の準備がされている必要があり、海外でのみ販売された商品は対象になりません。
複数区分の出願で、一部の区分だけ加速できますか?
直接はできません。全区分を同時に加速請求する必要があり、一部の区分だけが要件を満たす場合は、先に出願を分割または減縮します。
加速審査では必ず緊急性を示す必要がありますか?
必ずしもそうではありません。指定商品・役務のすべてが使用または相当の準備段階にある場合(タイプⅠ)、別途の緊急性の立証は不要です。一部のみの場合(タイプⅡ)は、認められる商業上の緊急性も必要です。
出願と同時に加速審査を請求できますか?
同時にはできません。出願後、最初の審査通知の前に請求します。
審査が早まれば、先に出願した先取り業者から守られますか?
いいえ。基準となるのは出願日と有効な優先日です。先取りガイドをご覧ください。
これらのルートを使うのに現地代理人は必要ですか?
台湾に住所または営業所がない外国出願人は、出願自体に現地の商標代理人の選任が必要です。
台湾出願に適したルートの選択
商標、商品・役務、発売時期をお知らせください。TIPOの標準名称との照合を行い、どのルートが適するかをご案内し、公的費用と現地代理人費用を分けてお見積りします。
ご記載いただけると助かる情報:
- 商標(文字・図形またはその両方)
- 商品・役務と対象ニース分類
- 発売・販売・侵害に関する事実関係
- 優先権の主張と最初の出願日(あれば)
Last updated: 2026年11月