Ma.K.は1980年代から日本の模型雑誌で連載が続き、独特の塗装技法と情景写真で一つの流派を築いてきました。40年以上を経てなお新たな作り手が入ってくるジャンルであり、横山氏本人も長くSNSで活動しています。この界隈を長く見てきた人にとって、FUTURE RELIC WORKSの宣伝画像の後方に立つパワードスーツは、名もない背景の小道具などではありません。見た瞬間に名前が出てきて、誰の手によるものかまで分かる作品です。

ごく普通の新商品告知だったはずのものが、そのまま権利侵害の疑いへ転がり落ちました。批判は雪だるま式に広がり、疑問の声も広がりました。このブランドは実際に何を売っていたのか。8月のKCF模型イベント会場では何を展示し、何を販売したのか。そして、すでに代金を払い、商品まで受け取った購入者はどうなるのか。
経緯
FUTURE RELIC WORKSとは
FUTURE RELIC WORKSは、レトロフューチャーを打ち出した3Dプリントブランドで、運営者の稲森進一氏が設計・出力・販売を担っています。正式開店の前に、試作品を界隈のベテランモデラーに渡して塗装してもらい、8月中旬のKCF模型展に持ち込んで披露しました。その後、ブランドはXアカウントを開設し、8月22日に創作者向け直販プラットフォームBOOTHでプレオープンしています。
開店から数日、ブランドは「売れ行きが想定以上」「出力をフル稼働中」「初回発送の準備中」といった報告を次々に投稿しました。その後、数枚の新商品宣伝画像について、Ma.K.の機体を無断で使用しているとの指摘が寄せられました。
発端――「これって意匠の無断使用です。」
2026年8月下旬、日本の模型作家・横山宏氏がX上に商品の宣伝画像2枚を貼り、短くこう書きました。
「これって意匠の無断使用です。」

2枚とも、開店したばかりのFUTURE RELIC WORKSのものでした。手前にあるのはブランド自身の小型フィギュア。しかし後方に立っているのは、見慣れた球形のパワードスーツです。画面のために急ごしらえされた無名のSF小道具ではなく、横山氏の『マシーネンクリーガー ZbV 3000』シリーズのファイアボール系機体でした。
画像を消し、謝罪し、その後――広がる不信と全面返金
原作者からの公開の指摘に対し、FUTURE RELIC WORKSはすぐに画像を削除し、リプライで謝罪しました。しかし、議論は収まりませんでした。一部のユーザーはブランドの過去の投稿をさかのぼり、他の「オリジナル」商品のデザインの出所にも疑問を示しました。イベント会場で違法複製品を販売していたのではないかという指摘も現れ、議論は2枚の宣伝画像から、ほかの商品や活動記録へと広がりました。

最初、FUTURE RELIC WORKSは横山氏の投稿の下に短く返信しただけでした。
「無知で申し訳ございませんでした。全て削除致しました。本当にすいませんでした。」
これに対し横山氏はすぐに問い返します。削除しても製品は全て販売と発送したあとだよね?
FUTURE RELIC WORKSは、問題の画像に写っている模型は販売も発送もしていないと答えました。しかしこの説明では外部の疑念は消えません。元の商品投稿にはすでに「多くの方にご購入いただき」と書かれ、その日のうちに初回分を発送すると告知されていたからです。
騒ぎが収まらないなか、8月30日、FUTURE RELIC WORKSは初めてまとまった書面の謝罪を出します。運営者の稲森氏は、3Dモデルの販売にあたり、新商品を予告するために、横山氏が著作権を有するMa.K.を無断で宣伝画像に配置・掲載したと認めました。自らの行為は作品と権利への敬意を欠くものであり、模型を作る者として起きてはならない軽率な行為だったと述べています。そのうえで、こう書きました。
「知らなかった」「悪意はなかった」という言葉で済まされる事ではなく、確認を怠り、販売に関わる告知に使用した責任は全て私にあります。
同じ行為を繰り返さないと約束し、横山氏から本件の説明や資料の提出を求められた場合には、事実に即して説明し、資料を提出するとしています。

声明の2ページ目では、界隈からの疑問に対して四点を補足しています。第一に、無許諾で掲載した画像は計4枚で、2回に分けて公開したと説明。自ら製造した、または販売目的で製造した商品は自社のフィギュアのみであり、Ma.K.の違法複製品を製造した事実も計画もないと否定しました。第二に、問題の画像はすべてAIで作ったものではなく、Ma.K.もAIが自動的に生成・配置したものではないと説明。背景だけをAIで作成し、Ma.K.は自らの意思と判断で配置したとしています。第三に、「8月中旬のKCFで違法複製品を販売した」というSNS上の情報を強く否定。第四に、「購入者全員」を対象に全商品の返品・返金を進めており、その範囲は問題の4枚の画像に関係する商品にとどまらないと説明しました。

9月1日、ブランドはBOOTHのメッセージ機能を通じて、8月31日に商品を発送した顧客に連絡し、返金方法を伝えて商品の返送を依頼したと述べました。9月2日、FUTURE RELIC WORKSは再度告知を出し、自らの軽率な侵害行為により、8月22日の開店以降に販売した商品すべてを回収対象とすると発表しました。

こうして、開店から2週間足らずのブランドは、8月22日の開店以降に販売した全商品を回収し、返金すると発表するに至りました。
同じことが台湾で起きたら
同じことが台湾で起きた場合、SNS上の批判だけでは収まらず、そのまま具体的な法的措置へと発展します。他人の著作物を無断で商業宣伝の画像に使う行為は、著作権法上の複製権侵害としての刑事責任と、公平交易法(台湾の競争法)上の誤認を招く表示および不公正な競争としての民事責任に、同時に直面しうるものです。
1. 広告の脇役なら侵害にならないのか――営利目的と「合理使用(フェアユース)」の境界
ブランドがMa.K.の機体を画面の要素として選び、他人の著作物に広告の世界観を支えさせると決めた時点で、著作権上の問題の核心に触れています。台湾著作権法の下では、保護される著作物を宣伝画像にはっきりと撮り込む、または合成し、その画像をインターネット上で公衆送信する行為は、合理使用の範囲に収めることが難しく、複製権・公衆送信権の侵害となる可能性が高まります。
新興ブランドにはよくある思い込みがあります。「正規品の模型を買って撮っているのだから問題ない」というものです。しかし、適法に模型を購入して得られるのは有体物の所有権であり、それを商業広告の脇役として使い、インターネット上で公開する権利まで当然に手に入るわけではありません。合理使用の中核は「批評、報道、教育」にあり、他人の営利行為を後押しするためのものではありません。目的が自社商品の販促である以上、通常の商取引の手順、すなわち著作財産権者からの書面による許諾の取得が必要です。
2. 公式ライセンスやコラボレーションと誤認させる表示か――公平交易法が禁じる誤認と信用へのただ乗り
ブランドが受注し、発送し、新商品を予告し始めた段階で、公平交易法上の問題も生じ得ます。ここで有効なのは、次の一つの問いです。画面からMa.K.の機体を抜いたとき、この広告の訴求力と世界観の連想は目に見えて落ちるか。
答えが「落ちる」であり、かつ全体の見せ方が、公衆に「公式の許諾がある」「コラボレーションである」という誤解を生じさせるに足りるものであれば、法律上の「誤認を招く表示」に当たります。さらに重いのは、他人のIPの知名度に便乗して新商品を売り込み、他人の努力の成果を吸い上げる行為です。これこそ法が厳しく取り締まる「他人の信用へのただ乗り」にほかなりません。事後に投稿を削除し、返金をしても、損失の拡大は止められても、すでに発生した民事責任は消えません。事業者は、所管当局から最高2,500万台湾ドルの行政制裁金を科されうるほか、著作財産権者からの損害賠償請求にも直面します。故意による行為であれば、裁判所が立証された損害額を超える賠償を、その3倍を上限として認めることもありえます。
本当に残すべき仕組み――「宣伝素材」を独立した製品として管理する
他人の商標を無断で使用せず、他人の特許権を侵害しなければ、商売は安泰だと考えてしまいがちです。しかし、著作権法による著作物の保護も、公平交易法による取引秩序の維持も、同じように注意が必要です。オンラインで容易に店を開ける現在、他人の著作物を自社ブランドの訴求に利用すれば、一時的に注目を集められるかもしれません。しかし、その後に生じる制裁金や信用の毀損は、返金だけでは埋め合わせられません。
一時の確認不足を、事業上の重大なリスクにしないことが重要です。許諾の確認は、新商品を出す前の標準工程に組み込むべきです。確認の手間を惜しまず、使用する素材ごとに権利関係を確認してください。
宣伝素材の権利関係、確認できていますか?
WISECODEは、台湾・中国・日本をはじめとする各法域での著作権クリアランス、宣伝素材のレビュー、公平交易法リスクへの対応をご支援します。